近年、企業の成長や事業承継を目的とした「M&A」が、中小企業を含む幅広い企業で一般化してきました。
M&Aが行われる際、多くの経営者や人事担当者が直面するのが「従業員の雇用はどうなるのか?」という疑問です。
一般的に、M&Aの形態によっては新たな条件提示が必要な場合もありますが、多くは雇用契約がそのまま承継され、従来通りの条件で働き続けることができます。
しかし、その従業員が「在留資格(ビザ)を持つ外国人」だった場合、話は別です。日本人と同じ感覚で進めてしまうと、思わぬトラブルに発展しかねません。今回は、M&A時に必要な外国人の在留資格手続きについて解説します。
みなさま、こんにちは!
ウイング行政書士事務所では、外国人を雇用している企業様、これから雇用を検討している方、就労ビザが必要な外国人の方に向けて、様々な情報を発信しています。
1. M&Aの4つの形態
外国人の手続きを理解する前提として、まずは対象となるM&Aがどの形態に該当するかを確認する必要があります。M&Aは大きく以下の4つに分類されます。
- 新設合併:複数の会社が合併し、新しい会社が誕生する場合
- 吸収合併:自社が他の会社に吸収され、消滅する場合
- 新設分割:自社の特定の部署のみが切り離され、新しい会社になる場合
- 吸収分割・事業譲渡:自社の特定の部署のみが、別の会社に吸収または譲渡される場合
これらの形態によって、外国人従業員から見た「所属機関(勤務先)」が変更になるかどうかが決まります。

2. 一般的な在留資格の場合:「14日以内の届出」
「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの一般的な就労ビザを持つ外国人の場合、M&Aによって所属機関(会社名や法人番号など)に変更があったときは、出入国在留管理庁への届出が必要です。
- 対象となる主な在留資格 高度専門職(1号イ・ロ、2号)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能 など
- 期限 事由が発生した日(M&Aの効力発生日など)から14日以内
- 提出方法
- インターネット(出入国在留管理庁電子届出システム)
- 地方出入国在留管理局の窓口へ持参
- 東京出入国在留管理局への郵送
【郵送先】 〒160-0004 東京都新宿区四谷1丁目6番1号 四谷タワー14階 東京出入国在留管理局 在留調査部門 届出受付担当
3. 【要注意】「特定技能」の場合は事前の許可申請が必須!
最も注意しなければならないのが、「特定技能」の在留資格を持つ外国人を雇用しているケースです。特定技能の場合、上記の「14日以内の届出」では済まされません。
① 「在留資格変更許可申請」が必要
特定技能外国人がM&Aにともなう会社変更(所属機関の変更)を行う場合、例外なく出入国在留管理局へ「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
② 各産業分野の「協議会」の手続き
在留資格の変更だけでなく、所属する産業分野の協議会での手続きも必要です。分野によって「新規の入会申請」が必要なケースもあれば、「変更申請」で済むケースもあるため、各協議会への事前確認が欠かせません。
⚠️ スケジュール遅延は「不法就労」のリスクも
最大の見落としがちなポイントは、特定技能に関わるこれらすべての手続きを、M&Aによる所属機関の変更前(効力発生日前)までに完了させておく必要があるという点です。
万が一、手続きが間に合わずに新しい環境で働かせてしまった場合、外国人が必要な在留資格を満たしていない状態となり、企業側が「不法就労助長罪」に問われる恐れがあります。特定技能外国人がいる場合は、余裕を持った綿密なスケジュール管理が極めて重要です。
まとめ:正しい理解と早期の準備が安心につながる
M&Aは企業にとって大きな転機ですが、働く外国人従業員にとっても今後の生活を左右する一大イベントです。
雇う側・雇われる側の双方が安心して新しいスタートを切るためには、在留資格の制度を正しく理解し、早くから準備を進めることが成功の鍵となります。M&Aの計画が立ち上がった段階で、自社に該当する外国籍社員がいないか、どのビザを持っているかを必ず確認しておきましょう。
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